「学習欲」について言えば、ぼくもかなり強いほうだ。データ的には、ストレンクスファインダーのTOP5にも入っていたし、そもそもその自覚が昔からずっとあった。まあ学習欲というより好奇心がすさまじく、視覚でも聴覚でも情報に触れてしまうと考える脳になり、わからないに対する「?」をわかるに変容させていくための作戦を立てはじめてしまう。ちなみに、TOP5の中には「戦略性」もある。困った性質である(笑)。
そんな性質に乗っかってしまえ! と開き直ったから、弊社TENGは、社員の「ぼく自身が学ぶことが事業につながる」という座組みにしている。ぼくがインプットしたことを、アウトプットして誰かの学びに変え、知識や経験を循環させられるように。だから、自然と「教育」の分野にぶつかってしまう。
そして、最近は少し余裕が出てきたというか、インプットに時間とお金を去年以上に割くようになり、さまざまな学びのプラットフォームに顔出すようになった。そこで、沸いたちょっとした違和感、「?」の連続。
そうなんだよな。自分が踏み入れた、プラットフォームそのものに一度疑問を持っちゃうと、あの頃に抱いてしまった甘ったるい未来予測ばかりの楽観的な自分にはもう二度と立ち返ることができない。そうだ、少しでも期待してしまった自分がいけなかったのだ。
一人で勝手に期待して勝手に裏切られたオナニープレイをするたびに、高校のときの恩師を思い出す。
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高校生のぼくはとにかく沖縄の外に出たくてしょうがなかった。県外に出るにも海を越えていかなければならない、外の、本土をみれば、上には上のすげぇやつらがいる、と信じてやまず、「強えやつの中に飛び込んでいく」というジャンプ至上主義的な思想のもと高校生活を過ごしていた。
そんななか、東京の大学をでて地元に戻り先生となったSさん。2年間ぼくの担任をしてくれた彼女は、国語の授業を持っていたが、現代文でも古文でも漢文でも、教科書内容からほどよく逸れて自分の学生の頃を話をしてくれた。受験ばかりを意識させられる進学校ではあったが、そういった、窮屈すぎない、もっと人間の根本にある、生きるとは、考えるとは、悩むとは、と世界を知らずで経験の浅すぎる若者への哲学の時間を与えてくれたし、そもそもその考え悩む行為を真正面から許してくれた。それだけもまあ、恩師たる、なのだけど、2年の頃の進路相談かなんかの時間で聞かれたことが、その恩師たるを助長した。
「なんで沖縄から出たいの?」
そのストレートな質問にぼくは「人も情報も、いろんなものが集まってる東京にいけば、もっと自分が成長できると思うから」みたいなニュアンスのことを答えた。おそらく、自分をハンター×ハンターのゴンとでも思っていたのだろうか。今思えば、青臭すぎる。「成長」という言葉、今なら「ケッ」となってしまう。さて、Sさんは、何を思ったのが、ぼくの言葉を受け取って、少し間をとってから、微笑し、さらりと「東京行っても変わらないと思うけどね」とつぶやいた。その笑いにはSさんの人生が詰まっているようにも思えた。
「東京で一体何を見てきたんだろう、この人は?」と違うところで、東京への火がついてしまった。結局、ぼくは東京の大学に合格することができた。ちなみに、Sさんはすでに高校を去っていたので、合格報告すらできずだった。
上京したぼくは、1年目から、Sさんが言ってた言葉の意味を突きつけられたのだった。つまりは、抱いてた東京に、大学に、失望してしまったのだ。上には上がいるにはいたが、思ってたほどではなかったし、上にいる/いようとする奴らのもともとの環境を目の当たりにして、社会って何でこうも理不尽でできているのか、腐ってるなとすら思えた。目標を失ったぼくは授業に出なくなり、留年し、その4年後には大学を中退した。そのことには、一つも後悔はないし、間違った選択をしたとも思っていない。しかしだ、勝手にして期待勝手に裏切られるというプレイを19歳にて味わってしまった記憶は、今も消え去ることはない。
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Sさんは今どうしているんだろうか。風の噂では、先生を辞めたとかいう話も聞いた。何をしてたって別に知ったこっちゃないのだけど、ぼくの今の年齢は、当時のSさんと同じくらいになっているんじゃないだろうか。だからこそ、一つでも多く言葉を交わしたい。あなたからもらった言葉に高校生の時分のぼくはピンときてなかったけど、もはやそれは34歳になるまでずっとガムのように噛み続けるものとなり、現在進行形で味わえてしまっている。まさにこの年齢、今じゃないとあなたに伝える言葉としてうまく表現できないなんじゃないか、とふと思った。今年は、沖縄に一回戻ってみるか。同級生を数人たどれば、きっとSさんにもたどりつけるはず。ついでに(というも失礼だけど)もう一人の高校時代の恩師にも顔を見せたい欲が出てきた。どうなるんだろうな。
不思議とノスタルジックにもぐる日記となってしまった。そして、オナニーと恩師を並べる日がくるとはな、と自分でも驚いている。下劣な生徒でごめんなさい。
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