ボールペンの黒インクが切れただけ。たったそれだけのことなのに狼狽えてしまう。ソワソワして目の前の作業が手を付けられなくなる。
「替えのインクってサイズなんだっけ?」「Amazonで買ったらいつ届くんか?」「それまでの間、どのボールペンを代わりに使おうか?」「でも、ちょうどいい書き心地はこれなんだよなぁ」
などと頭の中で作戦会議めいたものが沸き起こり、仕事なんてそっちのけになる。すぐに路線スイッチが切り返られてしまうばかりでなく、アンコントローラブルであり、支配された脳みそに麻酔を打つためには、いくつか策が必要である。
その策について20代模索しまくったが、いとも簡単なことで、脳みそのある頭に焦点を当てるでなく、それ以外の身体に目を向けることだった。簡単な話、身体を動かして、狼狽えの原因を忘れさせること。良く効くのは、散歩、家事、雑草抜き、ノートへの書き出しである。
手足をばたつかせていると納まりがつく。「なんでこんなことで思考を独占されちまっていたのか」と我に返ると笑い話である(そのときの自分にとっては一大事なんだけど)。インク切れにすら速攻で対応できないわたし、しかしまあなんだ、そんな自分と手を取りながらやってかなきゃしょうがないのよな。てことで、受け入れるよ。